新しい収益認識基準とは?
新しい収益認識基準とは、わかりやすくいえば売り上げを計上するタイミングについての新しいルールです。
2021年4月から始まる会計年度から開始されます。
中小企業については、従来の基準で計算を行っても問題ありません(任意適用なので、適用させても良い)。
しかし、上場会社(以下、上場企業)や大会社(以下、大企業)に分類される企業にとっては、2021年の会計年度から強制的に適用されるルールになります。
ここでは、適用する企業について詳細に説明し、従来との違い、新しい収益認識基準が導入される背景を説明します。
まず、適用する企業は、先ほどお話しした通り、大企業または上場企業です。
大企業とは、会社法で大会社と呼ばれる企業のことで、次の2つの条件をクリアしている企業を指します。
・最終事業年度に係る貸借対照表に資本金として計上した額が5億円以上
・最終事業年度に係る貸借対照表の負債の部に計上した額の合計額が200億円以上
ちなみに両方の条件をクリアしている必要はなく、2つの条件のいずれかをクリアしている企業が大企業と呼ばれます。
実際資本金が5億円以上の企業であっても負債が200億円以下の企業はありますし、資本金が5億円未満でも負債が200億円以上の企業もあります。
負債が多いと、問題のある企業のような印象を受けますが、それだけの融資を受けたり、買掛金(負債に含まれる)があるというのは、相当な規模の企業であることがほとんどです。
そういった意味で上記の2つの条件をクリアしている企業が大企業として認められ、新しい収益認識基準の強制適用となります。
2つ目の条件である上場の有無ですが、上場予定のある企業も含まれます。
上場を予定している企業についても上場企業に準ずる基準となり、新しい収益認識基準の適用となるのです。
ちなみに大企業や上場企業、そして上場を予定している企業には子会社や関連会社もありますが、子会社や関連企業が中小企業の規模の場合であっても、親会社に合わせて新しい収益認識基準の対象になります。
そのため、親会社が大企業や上場企業、上場準備会社であったり、それらのグループ会社であったりした場合は、すべて新しい収益認識基準で計上する必要があります。
従来の収益認識基準との違いは、収益の発生するタイミングが挙げられます。
新しい収益認識基準では、収益がどのタイミングで発生して、財務諸表にはどう反映するのかを明確にしているのが特徴です。
その特徴は、収益は履行義務を果たしたときに発生するというものです。
たとえば、企業が販売したサービスや商品、製品を実際に顧客へ引き渡して販売の義務を果たしたときに売り上げとして計上されます。
つまり、収益を認識する基準が契約を履行したタイミング(履行義務)になるということです。
では、従来の収益認識基準は、どういったものだったかといえば、次の3つの基準のうち、3つ目の実現主義を企業がそれぞれ任意の認識で売り上げ計上していました。
・現金を受け取ったタイミング(現金主義)
・商品を提供したタイミング(発生主義)
・商品の提供をして現金や売掛金の受け取りが行われたタイミング(実現主義)
任意の認識というのは、商品やサービスを提供したとするタイミングです。
例えば、商品を渡したとき、手に渡った時に計上している企業もあれば、出荷したタイミングで収益になったと判定する企業もありました。
このような統一されていなかった状況だったものを顧客にわたって販売の義務を果たしたときに統一するというのが新しい収益認識基準になるのです。
ちなみに新しい収益認識基準によって保守や点検を主な業務にしているような企業は、従来一括で売り上げに計上していたのに対し、新しい収益認識基準に適用されてからは、段階的に計上しなければならなくなりました。
3つ目の新しい収益認識基準が導入された背景は、海外投資の促進と業績比較を容易にするといったものがあります。
実は、ここまでお話しした売り上げ計上のタイミングは、IFRS-15と呼ばれる国際的な会計基準をもとにしたものです。
これによって、海外の投資家がより正確に日本企業の経営状況を判断できるようになることから、投資が容易になります。
海外からの投資を呼び込むことで日本の企業の活性化が期待できるという背景が1つです。
もう一つが、国内企業間の比較が容易になるということです。
従来は、経営の状況をチェックしても収益認識基準が異なるので、企業間の正確な比較ができませんでした。
しかし、新しい収益認識基準を同時に導入することで企業の比較が容易になるのです。
このような内容が新しい収益認識基準になります。
認識の5ステップとサブスクリプション・モデル
次に新しい収益認識基準における収益の認識のための5ステップとサブスクリプション・モデルについて解説します。
まず、新しい収益認識基準の収益を認識するためには次の5つのステップを経る必要があります。
1・契約の認識
2・履行義務の認識
3・取引価格の算定
4・履行義務への取引価格への配分
5・履行義務の充足による収益の認識
1ステップ目は、契約の認識です。
契約に含まれる提供すべき商品やサービス内容について把握する必要があります。
2ステップ目は、契約内の顧客に対する履行義務について把握します。
ちなみに製品提供と提供した製品の保守サービスが一つになって契約もそれぞれ2つの履行義務(製品の提供と保守サービス)と把握しましょう。
3ステップ目は、契約上の取引価格がいくらかを算定し、把握します。
4ステップ目は、契約の販売価格を配分することで、履行義務を独立して販売する場合の価格を基準に算定します。
たとえば、先ほどの製品販売と保守サービスをそれぞれ配分していきます。
最後の5ステップは、こちらが製品を提供し、顧客が受け取った、いわゆる履行義務が充足されたタイミングで収益として認識します。
このように新しい収益認識基準で収益を認識していきます。
この認識を基にサブスクリプション・モデルについてわかりやすく考えていきましょう。
最近流行している、月や年単位などの決まった期間だけ料金を支払って利用するサブスクリプション・モデル(いわゆるサブスク)を新しい収益認識基準に当てはめた場合、1つの契約としてまとめること、顧客が実際に財あるいはサービスの提供を受けた時点で売り上げ算定することを認識します。
まず、一つのサブスクリプション・モデル内で複数の契約が発生していても個々の契約を結合して1つの契約として考えます。
たとえば、1つのサブスクリプション・モデルの契約で、複数のサービスの提供契約が発生していた場合も、各サービスの提供契約を個々に計算するのではなく、1つの契約とするものです。
次に売り上げを計上するタイミングについては、実際に顧客が財あるいはサービスの提供を受けた時点で売り上げとして計上します。
サブスクリプション・モデルでは、事前に支払いを受けています。
しかし、この支払いを受けたタイミングを売り上げとして計上するのではなく、顧客が契約した様々な製品やサービスを提供し、顧客がそれを受け取ったタイミングで初めて売り上げとして計上しなければなりません。
サブスクリプション・モデルは、顧客にとって利用方法がわかりやすく、多くの企業が実施している契約です。
しかし、新しい収益認識基準では売り上げ計上するタイミングについて注意を払う必要があります。
新たな問題科目「契約資産」と「契約負債」
新しい収益認識基準では、新たに「契約資産」と「契約負債」の勘定科目が設定されています。
実はこれが新しい収益認識基準での問題科目となることがあるのです。
ここでは、それぞれどのような科目なのか解説し、問題個所について説明します。
まず、契約資産は、対価を得るための条件付債権です。
そして、「企業が顧客に移転した財又はサービスと交換に受け取る対価に対する企業の権利であり、顧客との契約から生じた債権を除くもの」とされています。
問題は条件で、履行義務が果たされることで初めて計上できます。
製品の販売とメンテナンスがセットになった契約の場合、製品が販売されてもメンテナンスが実行されなければ対価支払いがされません。
このように履行義務の完了という条件が付いているため、サービスや製品の提供が完全に行われていない状態の債権になっているものが契約資産です。
次に契約負債は、前受金の表記から変わる勘定科目です。
つい前受金と記載しがちですが、今後は契約負債と記載しなければならないため注意が必要であり、問題となりうる科目になります。
この前受金と同じ意味の契約負債について説明すると、「財またはサービスを顧客に移転する企業の義務に対して、企業が顧客から対価を受け取ったもの又は対価を受け取る期限が到来しているもの」です。
たとえば、サービスや製品を顧客に提供する前に受け取っている対価が契約負債となります。

